不可能トリック
実はミステリー好きの私(いや21世紀に入ってからはほとんど読んでいないから,ミステリー好きだったというべきか?),20世紀には内外の作品を結構読んでいました.
国内では横溝正史や松本清張,外国ではA・クリスティやE・クイーンなんかを愛好していました.
いわゆる本格ミステリーと呼ばれる作品の醍醐味として意外な犯人というのがあります.まあ犯人っぽい人が犯人じゃ面白くないので,「えっ! この人が」という人物を犯人に仕立てるのが本格ミステリーの常とう手段です.
こうした理念の下,数々の名作が生まれ,動物が犯人,自分自身が犯人,事件を担当する探偵が犯人,作品の語り手が犯人など多くの意外な犯人が登場してきました.
しか~し,私がミステリーを読んでいた20世紀にはどうしても実現しなかった意外な犯人があったんです.
それは…
ミステリーを読んでいる読者が犯人というトリックです.そんなバカな!と思うでしょうが,いろんなトリックが考えつくされた現代において,意外な犯人という新しいパターンはそれ以外なかったのが実情でした.
それにしても,読者が犯人なんてすごいトリックです.普通に考えてできそうにありません.第一,読者が犯人という以上,読み終わった人全員が「自分が犯人だ」と思わなければ意味がありません.Aという読者は犯人だが,Bという読者は違うというのでは成立しないトリックです.わたしもこんなトリック実現することはないだろうと思っていました.
しか~し,そんな不可能トリックに果敢に挑戦した作品が21世紀になって書かれていたんです.情報をいただいたのは私のミステリー友達のSARAさんで,彼女のブログ(ミステリーの森)にこの作品の記事が出ていたんです.私が大急ぎで購入したことは言うまでもありません(SARAさんありがとうございます).
(写真) ウルチモ・トルッコの表紙.中央の円の部分は鏡になっていて,そこに映し出された自分が実は犯人ということらしいです.
その作品の題名は ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ です.作者は深水黎一郎氏,この作品で第36回メフィスト賞を受賞したんだそうです.タイトルのウルチモ・トルッコは語感からイタリア語またはスペイン語で究極のトリックを意味すると思われます(英語ならultimate trickでしょうか).
本が届いて以来少しずつ読んでいたんですが,このたびついに読了しました.
内容については語るわけにはいきませんが,読み終わって本を閉じた瞬間,「うーん,自分もこの人物を死に至らしめたひとりなんだろうな」とは思ったのでした.ちょっと,おやと思う部分も無きにしも非ずですが,伏線の張り方など結構よくできた作品とは私も思いました.
これを機会にまたミステリーにハマってみようかとちょっと思ったのでした(これ以上手を広げると1日30時間以上必要な気が… 泣).
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